本のおさかなさん

小説、詩、エッセイなどの本の中からから、魚や水生動物を集めた辞書型水族館です。

さかな

サメ

村上春樹「シドニー日誌 9月27日 」『Sydney!』文藝春秋

ある新聞に、若い頃サーファーだったという人がサーファーと鮫についてコラムを書いていた。彼によれば、オーストラリアのサーファーは鮫の出る海岸を好む。どうしてか?混み合っていないからだ。一般の人は鮫を怖がって海に入らない。おかげで素晴らしい波が乗り放題になる。サーファーにとってはこたえられない。


サメ

村上春樹「村上龍のこと 」『村上龍VS村上春樹 ウォーク・ドント・ラン』講談社

もちろん僕は村上龍氏を非難しているわけではない。誰にも村上龍を非難することなんてできない。この人は鮫のように口から状況を呑みこみ、そして前に進む。いかなる理由であれ、停止は死を意味するのだ。


サメ

多和田葉子「目星の花ちろめいて 」『ヒナギクのお茶の場合』新潮社

鮫のように光る背広を着た男がわたしを迎え、ああ助かった、助かった、としきりに頷いてみせる。鮫氏に案内されて、殺風景な部屋に入った。


サメ

川上弘美『いとしい』幻冬舎

君が好きだよ。僕の今までの一生にあらわれたどんな鮫よりもどんなメタセコイアよりもどんな揚子江の流れよりも富士にかかるどんな笠雲よりも君のことが好きだよ。


サメ

泉鏡花「海異記 」『泉鏡花集成4』筑摩書房

あやかし火について、そんな晩は、鮫の奴が化けるだと……あとで爺さまがいわしった。


サマー・スティールヘッド

レイモンド・カーヴァー、村上春樹 訳「サマー・スティールヘッド 」『Carver's Dosen レイモンド・カーヴァー傑作選』中央公論社

僕は言った、「バーチ・クリークでとれた馬鹿でかいサマー・スティールヘッドだよ。見てよ。ちょっとしたものだと思わない?もうばけものだよ。僕は死にものぐるいでクリークじゅう追っ掛けまわしたんだ」僕の声は変になってしまっていた。


サバ

フランソワーズ・サガン、朝吹登水子 訳『悲しみよこんにちは』新潮社

「私、鯖の専門家じゃありませんけど……」と私は言った。


サバ、イワシ、コハダ、キス

筒井康隆「バブリング創世記 」『バブリング創世記』徳間書店

神、光あれと言いたまいければサバ、イワシ、コハダ、キスその他森羅万象有象無象すべて地に充ちたり。


サバ、イワシ、アジ

川上弘美「百年 」『溺レる』文藝春秋

シンコを食べつくしたあと、サカキさんは鯖、鰯、鰺、と、つぎつぎにひかりものばかり頼んだ。二時間ほども、サカキさんはひかりものばかりを食べつづけた。


サザエ

吉本ばなな『TUGUMI』中央公論社

父は明日、きっとひものやさざえを持ちきれないほど抱えて新幹線に乗るのだろう。台所に立つ母は振りむき、私や人々の様子をたずねるだろう。幻のように淡く浮かびあがるその情景は、私を、目まいのするほど幸福なひとり娘にする。


サザエ

岩井俊二『ラヴレター』角川書店

病院の独特なにおいが否が応でもその頃の記憶を刺激して、あたしはすっかり重くて暗くてうすら淋しい気分になってしまった。待合室の書棚にはサザエさんのコミックが当時のまま第一巻からずらりと並んでいた。あたしはその中からランダムに一冊抜き出してベンチに座った。


サケ、ヒラメ

エド・マッカーシー、メアリー・ユーイング=マリガン、石垣憲一 訳『誰でも納得!赤ワイン』講談社

鮭をピノ・ノワールで、というのはおいしいコンビです。これがうまくいくのは、鮭が脂っこくて風味の強い魚であり、ピノ・ノワールがタンニンの少ないワインだから。ピノ・ノワールと、ただあぶっただけの舌ヒラメでは、たぶんワインが勝ちすぎておいしくないでしょうし、鮭と、どっしりとしてタンニンの強いカベルネでは、ワインが金属的な味になってしまいます。


サケ、マス

ポール・ギャリコ、矢川澄子 訳『雪のひとひら』新潮社

雪のさやかは、深みにひらめく銀色の鮭や鱒に心惹かれていますから、彼らのそばで一生を送ることになるでしょう。


サケ

イソップ、山本光雄 訳「隣り同士の鮭たち 」『イソップ寓話集』岩波書店

隣り同士の二匹の鮭がありました。一匹は深くて道から遠い沼で暮らし、、一匹は道の上の小さな水溜りで暮らしていました。


サケ

柳澤桂子『われわれはなぜ死ぬのか』草思社

群れをなすサケは、仲間に押されて宙に舞いあがったり、岩にぶつかったりして、死ぬものもある。それでもただひたすら、何かに憑かれたように河の上流に向かってのぼっていく。河の流れをのぼりきったところで、サケは産卵する。雌のために産卵の場所をあらそって確保するのは、雄の役目である。産まれた卵に精子をかけ終わると、サケは死ぬ。産卵を終わった雌も死ぬ。


サケ、クジラ

星野道雄「満天の星、サケが森をつくる 」『イニュニック アラスカの原野を旅する』新潮社

「わたしはクマに属している」
と、その男は真顔で言った。クマ、ハクトウワシ、サケ、クジラ、……さまざまな生きものをトーテムポールにくり抜き、血縁の神として祭った南東アラスカのインディアン、クリンギット族。


サケ

澁澤龍彦「金色堂異聞 」『唐草物語』河出書房新社

まだ金色堂が燦然と輝いていたころ、北上川の鮭は目がくらんで、平泉より上流にはさかのぼれなかったといわれています。


サケ

佐野洋子「何ごちそうになったの? 」『ふつうがえらい』新潮社

「何々さんちのごはんすごい。鮭まるのまま全部使って、すごく色々なの。初めはね、生の鮭のマリネでね、それから照焼きもあってね。イクラ丼でしょう。お汁はかす汁でね。それから、頭の骨の酢の物もあったよ。おじさんなんか、骨のところの身、ちゅうちゅう吸ってるの。真ん中の太い骨焼いたの、あそこが一番おいしいんだってよ」


サーモン

スーザン・ブラックモア、由布翔子 訳『生と死の境界 [臨死体験]を科学する』読売新聞社

私はときどき、それ以外の色と出合ってきた。たとえば、イギリスの著名な哲学者で、生粋の無神論者A・J・アイヤーは最近、自分自身の臨死体験を報告して世間を驚かせた。彼は、あてがわれた病院食を拒んで勝手に食べたスモークサーモンを喉につまらせ、四分間ほど心臓が停止した。彼は、明るい赤い光を見たと言っている。ただし、トンネルは出てこなかったので、これは違う種類の体験かもしれない。確かに白や黄色の光がもっとも一般的で、これこそまさしく生理学的理論から予測されるものである。これらの理論は(他の理論は違う)、光の色といった単純な細部をみごとに説明できる。


サーモン

ウィングフィールド、芹澤恵 訳『フロスト日和』東京創元社

ハリー・バスキンは、黒っぽい髪に浅黒い肌をした男だった。年齢は、三十代の後半といったところ。やたらと大きなデスクにつき、スモーク・サーモンのサンドウィッチの食べ残し以外、何も載っていない天板をまえにして、不機嫌な顔で回転椅子を右に左に揺すっていた。