本のおさかなさん
小説、詩、エッセイなどの本の中からから、魚や水生動物を集めた辞書型水族館です。
さかな
キンギョ
井上貴子「娯楽 」『RINGO FILE 1998-2008』ロッキング・オン
インタヴューで何度も語られている通り、今作で椎名林檎は、曲作りをすべてメンバーに任せ、歌と作詞に集中した。あらゆるジャンルの音へ身を投じることで、「椎名林檎」という強烈な主体は軽やかに崩壊し、年齢も性別も超え、ある時は金魚にまたある時は黒猫へと変容する。
ヒラメ、カレイ、キンメダイ、ギンダラ
渡邊香春子『調理以前の料理の常識』講談社
ひらめやかれい、金目だい、銀だらなどを煮るときは、フライパンが手軽。口径が広いので重ならず、フッ素樹脂加工なら焦げつかない。
キンギョ
村上春樹『1Q84 BOOK2』新潮社
しかしペット売り場に行って、水槽の中でレースのような鰭をひらひらと動かしながら泳いでいる実際の金魚を目の前にしているうちに、青豆にはそれを買い求めることができなくなってしまった。金魚は小さく、自我や省察を欠いた無考えな魚のように見えたが、なんといっても完結したひとつの生命体だった。
アナゴ
ウォルター・アイザックソン、井口耕二 訳『スティーブ・ジョブズⅡ』講談社
そこでリサの記憶に強く残ったのは、父親とおいしい食事をしたこと、食べ物には文句ばかりの父が穴子の寿司などを楽しむ姿だった。うれしそうに食べる父親を見たとき、リサははじめて父の隣に座ってリラックスしている自分に気づいたのだ。
サバ
家入一真『こんな僕でも社長になれた』イースト・プレス
あの……『塩鯖サーバー』って言うんだけど……えっと、鯖とサーバーをかけてるの、分かるよね……ネーミングも面白いから女の子にうけるかなって思って。
ヤマメ
横尾忠則「炎と化した那智の竜神 」『導かれて、旅』文藝春秋
川底の石まで透き通って見える清流にはやまめが郡ををなして泳いでいる。ぼくは清流に魚が泳いでいる夢をよく見るが、そんな夢は僕にとっては一種の霊夢で、その証拠に目覚めても不思議な至福感にいつまでも包まれていることがある。
ヤドカリ
萩原朔太郎「青猫抄 」「寄生蟹のうた 」『ちくま日本文学全集 萩原朔太郎』筑摩書房
あやしくもここの磯辺にむらがつて
むらむらとうず高くもりあがり
また影のやうに這ひまはる
それは雲のやうなひとつの心像
さびしい寄生蟹の幽霊ですよ。
ヤコウガイ
いとうせいこう、みうらじゅん『見仏記』角川書店
「こんなに小さいの?ショックだよ。俺、すっげえショックだよ。がーっかりだよ」
まあまあとなだめて、ガラスの向こう側を必死に見た。かなり遠いので微細な部分はまるでわからないが、夜光貝をあしらった見事な贅沢な壇の上に、沢山の仏が載っている。とにかく異常なほどの装飾性だ。
ヤクガイ
清少納言「枕草子 一三七 」『新版 枕草子 下巻』角川書店
公卿、殿上人、かはりがはり盃取りて、果てには屋久貝という物して飲みて立つすなはち、とりばみといふ者、をのこなどのせむだに、いとうたてあるを、御前には女ぞ出でて取りける。
ワニ
『チェブラーシカ』プチグラパブリッシング
ここは街の動物園。”わに”として働くゲーナは、おうちへ帰るとひとりぼっち。
「そうだ、友だちぼしゅうのはり紙を出そう。ええと…わかいわに友だちぼしゅう中」
さっそくそのはり紙を見てゲーナのところへだれかがたずねて来ました。
「君はだれだい?」「チェブラーシカだよ」「あなた何者なの?子ぐまさん?」「ぼくもわからないんだ」
ワニ
ルイス・キャロル、柳瀬尚紀 訳『シルヴィーとブルーノ』筑摩書房
「鰐はどれくらい短くなったの?」話が少々こみいってきたのでぼくは尋ねた。
「つかまえたときの半分の、もうその半分に短くなったよ──これくらい」といって、ブルーノは両腕をいっぱいにひろげた。
ワタリガニ
村上龍『フィジカル・インテンシティ’97-’98 season』光文社
わたしはソウルに日韓戦を見に行く。ソウルへ行こうと思ったのは、まず第一にわたしが韓国料理が好きだからだ。今は特にケジャン、ワタリガニの唐辛子味噌漬けがおいしい。
ウミヘビ
アンデルセン、大畑末吉 訳「人魚姫 」『アンデルセン童話集1』岩波書店
その家で海の魔女が、ちょうど人間がカナリヤにお砂糖をなめさせるように、口うつしでヒキガエルにえさをやっているところでした。また、きみの悪い、あぶらぎった海ヘビを、ヒヨッコと呼んで、自分のだぶだぶした大きな胸の上を、はいまわらせました。
ウミヘビ
村上春樹「シドニー日誌 9月29日 」『Sydney!』文藝春秋
海に行けばウミヘビもいっぱいいる。うようよ、というほどではないにせよ、三十二種類のウミヘビがオーストラリアの近海に生息していて、ほとんどが強い毒を持っています。みんな見るからに凶暴な顔をしています。売れない文芸評論家と同じで、機会があればなんにだって噛みついてやろうという顔つきです。
ウミヘビ
宮沢賢治、天沢退二郞 編「春と修羅 第三集 」「水汲み 」『新編 宮沢賢治詩集』新潮社
冷たい風の海蛇が
もう幾脈も幾脈も
野ばらの藪をすり抜けて
川をななめに遡って行く
・・・・・・水を汲んで砂へかけて・・・・・・
ウミガメフー
ルイス・キャロル、柳瀬尚紀 訳『不思議の国のアリス』筑摩書房
「そなたは海亀フーにはもう会ったかな?」
「いいえ」アリスはいった。「海亀フーさんなんて知りませんもの」
「海亀風スープというのがあるじゃろ、その材料にする海亀フーじゃ」女王はいった。