本のおさかなさん
小説、詩、エッセイなどの本の中からから、魚や水生動物を集めた辞書型水族館です。
さかな
ウナギ
新美南吉「ごん狐 」『新美南吉童話集』岩波書店
「兵十のおっ母は、床についていて、うなぎが食べたいと言ったにちがいない。それで兵十がはりきり網をもち出したんだ。ところが、わしがいたずらをして、うなぎをとって来てしまった。だから兵十は、おっ母にうなぎを食べさせることが出来なかった。そのままおっ母は、死んじゃったにちがいない。ああ、うなぎが食べたい、うなぎが食べたいとおもいながら、死んだんだろう。ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった」
ウグイ
トーベ・ヤンソン、山室静 訳『たのしいムーミン一家』講談社
「三ばの黄色のカナリアが、橋の上にとまってるじゃないか。夜でてくるなんて、ふしぎだなあ」
「わたし、カナリアじゃありません。うぐいですよ」
と、いちばん近くにいたのが、口をききました。
トビウオ、タラ、マグロ
マイケル・ジャクソン、土屋守 監修、土屋希和子 訳「モルトウィスキーと食べ物 」『モルトウィスキー・コンパニオン』小学館
水で割っても、ウィスキーは食べ物と一緒に飲むには強い飲み物である。しかし、その組み合わせがうまく働くこともある。海草っぽく、胡椒っぽく、塩っぽいモルトは、当然、寿司にぴったり合う。ロンドンにある三越のレストランでは、天皇の食事も作ったことがあるモトハシ・ヨシヒロ料理長が、トビウオの卵とともに塩っぽいオーバンを、味噌にからませたタラと一緒に紅茶のようなラガヴーリンを、マグロの刺身にあわせて胡椒っぽいタリスカーを出したことがある。
トビウオ
ダニエル・キイス、小尾芙佐 訳『アルジャーノンに花束を』早川書房
軽い、そして何も感じない。時空間をただよいながら膨張していく。
そのとき、水中から飛びあがる飛び魚のように、実在の外殻を突き破ろうとするまさにそのとき、下から引く力を私は感じる。
トノサマガエル
嶽本野ばら『下妻物語ヤンキーちゃんとロリータちゃん』小学館
BABY,THE STARS SHINE BRIGHTのお洋服は、梅田のエスト1というファッションビルに入っていた、Jane MarpleやMILKなどロリータ系のお洋服を揃えているマリアテレサというお店で買うか、さもなくばBABY,THE STARS SHINE BRIGHTのHPにアクセスして通信販売をして貰うかのどちらかにしていました。BABY,THE STARS SHINE BRIGHTは、東京の代官山にしか直営店を持っていません。茨城に移住が決まった時、ですから私は、茨城は東京ではないけれどその隣だし、日帰りで本店に行くことが出来ると思い、夢をぱんぱんに、殿様蛙の口のように膨らませたのでした。が、いざ下妻に移ってみると、そこは田んぼ、田んぼ、田んぼしかない見事な農村地帯。東京は代官山にあるBABYに行って帰ってくるのは日帰りで出来ますけれど、それをやろうと思うと一日がかりで動かねばなりません。
ドジョウ
星新一「ささやかれた物語 」「水 」『つねならぬ話』新潮社
ある農家は、考えたあげく、ドジョウの幼魚を仕入れてきて、水たまりに放ってみた。それは成長し、食料になった。ふやせば、売って利益が出るかもしれない。
ドジョウ
高橋克彦『ドールズ』角川書店
その水脹れした顔面から四肢、さては着物や帯に至るまで、昨年の一件物に彷彿たるのみか、死骸の上にとまった烏二羽が、水脹れした腹をつつくので、さらに凄惨の気を漲らせるのであった。これは水死人形の腹に、泥鰌を入置いたのを、足を結び付けられた烏の喰うのが、さながら腹の肉を啄むように見えるのであった──
ドジョウ
車谷長吉「愚か者 」「母の髪を吸うた松の木の物語 」『鹽壺の匙』新潮社
庭の松の木に、その年はじめて蜘蛛が巣をかけた日、父は柱を抱いて狂人になった。その日の永い午後、土間の甕の底にどぜうが静まり、母は厨の板の間に両手を突いて足裏を見せていた。
ドジョウ
北原白秋、高野公彦 編「海阪 」「印旛沼吟行集 」『北原白秋歌集』岩波書店
この己は鰌になりぬ天然更新の君は鯰になるならよしも
うれしくておれは鰌を踊るなりこれは大きい印旛沼の鰌
ざるふりてすくふお前がうれしくておれは鰌になりにけるかも
タラ
ジェイムズ・ジョイス、柳瀬尚紀 訳『フィネガンズ・ウェイク 1・2』河出書房新社
さらに宿昔でもない初めに建立ありし日々、よそよそしく友なきわれらが旅人は、ヴァン・デーモンの地から、なまくら北方詩人か草枕筆鋒詩人かの風情で、鈍渋な鈍物の目をけだる意志げにあげて己の十二宮図の半兆候を眺め、瓶首、欠けカップ、穿き潰れ靴、芝土、エニシダ、キャベツ葉、干鱈なんぞをながなが見つめて、天使のもとには彼のためにどぶろくやお茶やじゃがいもや煙草やワインや唄にもしたい女が群れ宿っていることを願望的に知った。そして非公式に擬考の擬笑を擬始した。
タラ
ルイス・キャロル、柳瀬尚紀 訳『シルヴィーとブルーノ』筑摩書房
一匹の途方もなく大きな鱈が釣針をくわえ、ぴくりとも動かず土手に横たわっていた。
「たしか、鱈は」と男爵は口ごもった。「海水魚だとばかり思っておりましたが」
「この国ではちがうのです」次総督がいった。「はいりましょうか。道々、息子に何かきいてみてください──何なりとお好きなことを」そしてふくれっ面の少年は男爵と並んで歩くようにと、手荒く前へ押し出された。
タラ、ウミガメ、エビ
ルイス・キャロル、柳瀬尚紀 訳『不思議の国のアリス』筑摩書房
「もうちょい早く歩いてくんろ」鱈がいったよ、蝸牛にさ
「海豚が後ろについてきて、ぼくの尻尾を踏んづける
海亀たちも海老たちも、どんどん先へいっちまう
みんな浜辺で待っている
タラコ
中島らも『中島らもの特選明るい悩み相談室その1 ニッポンの家庭編』集英社
「あらっ、あなたもなの。私もよ。太ったわぁ」
「やっぱり、夜寝る前に食べるのがいけないのかしら」
「そうよ。やめときましょう、って思っててもさ、お酒飲んだりすると寝る前に無意識のうちに”たら子スパゲティ”作ったりするじゃない?」
「そうよ。それで無意識のうちに刻みのりをかけてたりするのよ。それで太るのよ」